ただ、高専賃とひと口に言っても、その内容は玉石混淆なのが現状だ。そもそも決められた情報を登録するだけで、バリアフリーなどの設備要件が一切ないため、必ずしも高齢者が住みやすい物件ばかりとは限らないのだ。管理人の配置や付帯サービスの有無も物件によって違う。


ピンからキリまで! 高齢者向け賃貸住宅の種類

国交省の調べでは、8割の物件で緊急時対応サービスが実施され、6割で食事が提供されている。月額家賃の中心価格帯は5万~8万円、部屋の広さは「18平方メートル以上25平方メートル未満」が多い。

高専賃の中にはバリアフリーなど一定の設備要件を満たし、都道府県知事等の認定を受けた「高齢者向け優良賃貸住宅」(高優賃)もある。居室の広さは原則25平方メートル以上で、キッチンやトイレ、浴室、収納設備等を完備。緊急時対応サービスの利用も可能だ。

高優賃の最大の特徴は、所得によっては家賃の減額補助が受けられること。自治体によって助成額は異なるが、最大で家賃の2分の1が減額される。

住み替えを検討する人の中には、将来の介護に備えたいというニーズもある。高専賃で介護サービスを利用する場合は、一般の住宅と同様に介護保険の要介護認定を受けて、外部の訪問介護などの事業者と利用契約を交わすのが一般的だ。

物件によっては訪問介護事業所を併設しているところもある。いずれにせよ介護にかかる費用は、サービスの利用に応じた負担となる。なかには独自の費用体系を設けて、定期的な安否確認などの介護保険外サービスを提供しているところもある。

介護度が重度化すると施設に住み替えざるをえない場合も

ただ、寝たきり状態となったり、認知症が進行した場合のことも考えておきたい。クリニックや訪問看護事業所と連携しながら24時間体制で医療的なケアに対応している物件もあるが、重度化すると介護施設に住み替えざるをえない場合もある。

実際に、高専賃を運営する事業者からも「認知症の徘徊などで他人の居室に勝手に出入りするようになると住み続けるのは難しい」という声を聞く。高専賃は借地借家法により借り手の居住権が保証されているとはいえ、実質的に住み続けるのが困難になる場合があるのだ。

たとえ住み続けられたとしても、介護保険の範囲内だけで収まらず、介護費用が思いのほか高額になる例もあるので注意が必要だ。心身の状態変化にどこまで対応できるのか、その場合の介護費用がいくらになるのかを確認しておくべきだろう。