「あの5年間は人生で一番勉強したと思います。家内から『お父さん、気がふれたんじゃないの?』と心配されました。自腹だとやる気が違います。すべて一発合格するために必死でした。お客さんの信頼を得るためには資格も重要なのです」

宮田さんのキャリアと勉強姿勢に注目していた資格学校から声をかけられ、退職と同時に各種研修の講師を任されるようになる。

ただし、経歴と資格だけで研修講師として生きていくことはできない。毎回の講義で生徒を引きつけ、満足度の高い教育を行い、研修を依頼してくれた人事部などの担当者にも納得してもらう必要がある。

「我々はサービス業です。お客さんにリピートしてもらわなければ成り立ちません。後輩の講師には『キャバレーのホステスと一緒だよ』とあえて伝えています」

事業会社で管理職を勤め上げた後、研修講師を目指す人は宮田さんだけではない。しかし、たいていの人は失敗して廃業に追い込まれるという。

「会社員時代の気分が抜けずに、ついつい上から目線で話してしまうからです。『あの人は偉そうだな』と思われたらリピートはありません。私は立ったまま講義するので、座って聞いている生徒さんより視線は高くなってしまいますが、気持ちは常に『横から目線』を意識しています。今、振り返ると、役職定年がいいチャンスでした。あのまま部長として定年を迎えていたら、上から目線で失敗していたかもしれません」

1日コースの研修は平均7時間。椅子に座らず、テキストも持たず、身振り手振りを交えて情熱的に語りかけるのが宮田さんスタイルだ。研修や移動がない日はスポーツジムに通い、体力の維持向上を図っている。

「立っていられなくなったら廃業しようと思っています。3日間連続で講義ができる体力を維持するのが目標です」

講義のトレーニングも怠らない。同じテーマの研修内容を要望に応じた時間で話せるようにしている。

「一つのテキストを15分、30分、60分でそれぞれ話す練習をしています。時代感覚にフィットした講義をするためには、日々の生活でアンテナを高くして、好き嫌いせずに手当たり次第にネタを仕入れることが必要。マンガも読みますよ」

(伊藤千晴=撮影)
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