●経理部門
経理部門でも責任者クラスとなれば、自分の会社の安全性に気を配ることも大事だ。だとすると、たとえば総資本(資本+借り入れ)に対して自己資本がどれくらいを占めるかを示す、自己資本比率はまず押さえておくべきだ。あるいは、流動負債(1年以内に返済すべき負債)に対する流動資産(1年以内に現金化できる資産)の割合を示す流動比率も経営者が見たい数字だろう。
さらに、手持ちのキャッシュがどれくらいあるかがわかる、手元流動性にも気を配っておくといい。経営者は皆、こうした細かい数字すべてに注意を払っている。何しろ、キャッシュがなくなれば会社は潰れてしまうのである。
書面で出す数字は、まず「誰が読むのか」を考えることが第一歩。たとえば営業マンが課長に報告書を出した場合、課長や営業部長はそれらをいったん取りまとめてその上の役員、場合によっては社長に提出する。
営業マンの仕事は営業であって、報告書の作成ではない。ただ、上の人にとってハンドリングしやすいよう数字をつくっておくことは必要な作業である。
上の人が求めている数字が何なのかを、上の人の立場に立って考え、報告する。そういう作業に若い頃から慣れておけば、高評価につながるだろう。
自分の数字だけでなく、部内や社内全体の数字を把握している人がやはり偉くなれる。部長になってやっと部のことを考え始めるようではいけない。会社全体の中での自分の部、自分の課の位置づけを常々考えられる人が、将来の経営者だ。
1957年生まれ。京都大学法学部卒業、米ダートマス大学経営大学院でMBA取得。96年、小宮コンサルタンツ設立。著書多数。