何のためにグローバル化に挑むのか。グローバル化は新たな売り上げだけではなく、新たな競争優位を企業にもたらす。海外での販売拡大をめざす企業は、新たな売り上げに加えて、競争優位の確立を追求するようにしなければならない。そうでなければ、グローバル化への挑戦は戦略なき膨張となってしまう。

グローバル化が企業にもたらす競争優位については、国際マーケティングの研究者たちが数々の議論を重ねてきており、論争は今も続く(小田部正明、クリスティアン・ヘルセン著『国際マーケティング』碩学舎)。

グローバル化が企業にもたらす競争優位。その第一の源泉は、標準化である。事業をグローバル化することで生じるひとつの優位性は、その規模である。そして、この規模による強みを十分に引き出すためには、企業活動のグローバルな共通化が必要となる。

標準化されたマーケティングをグローバルに展開する企業は、ローカルな事業展開では実現できないスケールによるコストダウン、あるいは取引先への交渉力を実現したり、グローバル・ブランドとしての存在感を高めたりすることができる。グローバルに事業を展開する企業が、各国・地域におけるその製品やサービスやプロモーションを共通化できれば、開発コストの重複を削減したり、生産や調達の規模を拡大したりすることで、企業活動の効率は大きく向上する。

あるいは、グローバル化はブランド・イメージにも大きく貢献する。たとえば、アップルやコカ・コーラといったグローバル・ブランドがもつ圧倒的な存在感を思い起こしてほしい。共通の製品やデザインによるグローバルな成功と存在感は、一流のイメージをブランドにもたらす。

グローバル化による競争優位の第二の源泉は、調整である。グローバル化は、企業にとっての学習機会の増大でもある。グローバル企業は、各国・地域を担当する部門間で調整を行い、ローカルな事業展開では実現できない多様な経験――すなわち異なる生活習慣やインフラ整備や法制度のもとでのマーケティング実践の経験――そしてそこから編み出される気づきやアイデアを社内で共有して、いち早く新たな取り組みを進めることができる。