「攻めの経営」で「3度目の正直」!?

パナソニックは、デジタル家電事業の縮小など「負の遺産」処理にピリオドを打ち、反転攻勢への狼煙を上げた。それを象徴するのは、通常の設備投資に加えて2016年3月期以降に新たに設定した1兆円規模の「戦略投資枠」だ。

見据えるのは、創業100年に当たる19年3月期での売上高10兆円達成にある。売上高10兆円への挑戦はこれが3回目で、1兆円投資で鮮明にした「攻めの経営」で「3度目の正直」が成し遂げられるか、真の復活に正念場を迎える。3月26日、同社の事業方針発表の会記者会見で、津賀一宏社長は不採算事業などからの撤退を通じ「構造改革は完遂した」と宣言した。

確かに、津賀社長の改革断行により、13年3月期まで2期続いた7000億円規模の最終赤字を計上し、純有利子負債が一時、1兆円まで積み上がった“泥沼”から這い上がった。15年3月期は6期ぶりに実質無借金経営も実現した。4月28日発表した同期の決算で連結最終利益は前期を49%上回る1794億円となり、どん底だった12年6月に社長に就任して以来、津賀社長が取り組んできたコスト削減と事業構造の転換が実を結んだ。

構造改革完遂宣言はその自信の表れであり、1兆円投資は反転攻勢への強い決意表明だった。投資対象は企業の合併・買収(M&A)をはじめ、大型工場建設や研究開発などで、初年度の16年3月期は、設備更新費など通常の設備投資に戦略投資枠から2000億円を振り向け、総額4800億円を投じる。

津賀社長は戦略投資枠を「非連続な成長の実現」に狙いを定め、M&Aについては「1000億円単位もあり得る」と従来にない大型案件も示唆する。その先にあるのは、19年3月期を目標に据える売上高10兆円の達成だ。15年3月期の連結売上高が7兆7150億円であり、売上高10兆円に向けて今後4年間で2兆2850億円を積み上げなければならない。1兆円投資はそれを生み出すテコとする。