「生活費用通帳」で収支を見える化
とはいえ、パートだけに収入は月平均16万円前後。ボーナスはなく、年収にするとおよそ200万円。お世辞にも高収入とは言いがたい。その中でも子供をのびのび育てるために陽子さんが編み出したのが、「100万円通帳管理術」だ。
パート代が振り込まれると、食費など必要経費を除いて別の口座に移す。光熱費、通信費などはそこから引き落とされるようにして、毎月の収支を把握した。
その口座に、“資本”として100万円を入れておくのが陽子さん流のアイデアだ。100万円を上回ればその月は黒字、下回れば赤字と判断できて、なによりいいのは気持ちに余裕が持てること。出費が嵩んでも100万円という元手があるから慌てずに済むわけだ。
「イベントはケチらないのがわが家の方針。クリスマスプレゼントやお年玉は、必ず渡していました。予算も奮発して、お年玉なら子供それぞれに1万円ずつ。『これだけか』というさびしい気持ちにさせたくないので。10月には双子のお誕生日があり、毎年、秋から冬は100万円が目減りしますが、その数字を見ると、『よし戻すぞ』って頑張る気持ちになれるんです」
学校でテニス部に入ったらラケットを買い揃え、携帯電話も高校生のときから与えた。小遣いは高校時代には毎月1万円ずつ、大学生になってからはそれぞれ2万円に増やしたというから太っ腹だ。そのために子供たちは「うちは貧乏だから」と卑屈にならず、のびのびと成長できたのだ。
もちろん、陰には陽子さんの人知れない努力があったのは言うまでもないだろう。家計の中で重い負担となる住居費は、幸い、都営住宅に入れたため、双子が高校までは毎月6500円で済んだものの、自分の洋服を買ったり、外食や旅行をしたりという贅沢はほぼ皆無だ。
食費もしかりである。予算は1カ月6万円。これを日割りした1日2000円の範囲で、計算しながら買い物するのを習慣づけた。食べ盛りの男の子3人を抱え、お弁当まで作って2000円に収めるのは、たやすいことではない。
「買いすぎてしまったら翌日は買い物を控えて帳尻を合わせる、生鮮品ならあの店、飲み物ならここと、品物によって安い店をハシゴするのは当たり前でした」