ヒット商品の裏に見えた共通点

今回紹介した4つの「高くても売れる」企業には、5つの共通点がある。

(1)徹底して「顧客の声」を聞く

第1に、「顧客の声」を重視する。ハミューレでは、店舗スタッフが顧客から聞いた要望を「見える化」する「声のなぐり書き」が商品開発の源泉になる。八代目儀兵衛のお米ギフトも、顧客ニーズに応え続けた結果、生まれた。

能作とシャルマンは小売店を通して、顧客の声を聞く。能作は「食器がほしい」と求められ、錫100%を着想。シャルマンがカスタマーセンターを無休にしたのも、顧客の声に即応するため。そこに差別性が生まれた。

(2)自社の都合より顧客の都合

第2に、他社との競争以上に顧客満足を追求し、自社の都合より、顧客の都合を優先する。シャルマンは既存の素材で機能の優劣を競っても、顧客が求めるかけ心地の実現には限界があると考え、8年かけて「理想の素材」に到達した。ハミューレも工程が増え、手間がかかっても、顧客の快適性を優先。結果、群を抜く競争力が生まれた。

(3)思考と行動の軸がブレない

第3に、一貫して考え方の軸がブレない。ハミューレは、商品開発の目的を明確にすると、実現するまで手を休めない。能作も錫100%の路線を決めたら、加工困難でも変えず、それが「逆転の発想」を呼び込んだ。軸がブレると中途半端なもので終わる。

(4)オープンイノベーション

第4に、自社の壁を越え、社内外の知識を融合させる。能作はデザイナーから逆転の発想を取り込んだ。シャルマンは大学の最先端の研究とのコラボレーションで世界初の快挙を達成。八代目儀兵衛は新進クリエーターの視点を得て、京都文化を融合させ、お米のイノベーションを実現したのだった。

(5)凡事を重ねて非凡に至る

最後に、特に印象的だったのは、八代目儀兵衛で今も毎日、社員全員で米の食べ比べを続け、ハミューレで日々、「声のなぐり書き」や社内清掃を習慣づけているように、一見、「凡事」に見えることを大切にしている点だ。

新しい着想やアイデアは、いざ考えようと思ってもすぐできるものではない。凡事を続けるなかで気づきが得られ、結果、「非凡」な価値が生まれ、顧客も対価を払おうとする。「凡事の非凡化」も忘れてならない法則だ。

(和久六蔵=撮影)
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