米屋本来の強みを取り戻す。目利きの腕を磨くため、以降、毎日数種類の米の食べ比べを続け、甘み、粘り、香りなど独自の指標でデータベース化しては、舌に味を記憶させた。
ある日、お米マイスターとして小学校を訪ね、子供の話に驚く。「お米は味がない」「おいしくないから食べない」。これでいいのか。自分ならお米の味を伝えることができる。米屋のブレンド米を「復興」し、「お米の新しい価値を伝えたい」。その思いを発信するため、06年、34歳のとき、ネット通販を行う八代目儀兵衛を設立した。ギフトのアイデアは顧客からもたされたものだった。初め、3キロの袋詰めを販売したが、ほとんど反応なし。原因は価格の高さだった。そこで、産地銘柄米とブレンド米の詰め合わせをつくったところ、お歳暮用の注文が急増。月商10万円が100万円に跳ね上がった。
「感動しましたね。ギフトにすれば、高くてもお米は売れるんやと。それからはギフトに注力していきました」
ただ、顧客からは外装などの粗悪さを酷評された。「プロの力を借りよう」。知り合いのつてで、思いに共鳴してくれた東京の新進クリエーターと出会う。外からの視点が加わったことで京都文化が見直され、ここに「お米文化に京都の伝統とおもてなしを融合させたお米ギフト」が誕生する。
京人形の生地の巾着袋に、食感がしっかりした「殿米」と柔らかい「姫米」をそれぞれ詰め、自分で掛け合わせて食べてもらう趣向の「良縁米」は結婚式の引出物に。厳選ブレンド米を西陣織で包んだ5キロ1万6200円の「献上米」は特別な相手への贈呈用だ。