実際、学校の勉強ができることと、イノベーションが起こせるかどうかはまた別の話だ。イノベーションに必要なのは、どちらかというと雑学である。学校の勉強ができるだけの「専門バカ」はもうコモディティ化してしまっている。「そういう人はお金を払って雇えばいい」という感覚だ。したがってスマホで勉強するときも、ひとつのことを掘り下げるよりは、雑多な知識の引き出しを増やそうとすべきだ。僕が「この人は仕事ができる」と思う人は、学生時代に成績がよかった秀才というよりも、「この人、なんでこんなこと知ってるの?」と思うような雑学系に強い人が多い。

日本人で初めてMIT(マサチューセッツ工科大学)のメディアラボ所長になった伊藤穰一は、大学を2度中退している。だから学歴としては高卒だ。だが博覧強記で、ニューヨークタイムズの取締役も務めているし、今度はソニーの社外取締役にもなる。彼くらいになると、もはや学歴など何の意味も持たない。

いま日本では「裕福な親の子供しか、いい教育を受けられない」という教育格差が話題になっている。しかしインターネットは万人が平等にアクセスできるものだ。ということは、勉強するかどうかは本人のやる気次第。勉強しようという“志”があるかどうかである。「凡人が秀才に勝つ条件」の3つめとして、“志”を挙げたゆえんだ。

いまはその気になれば、スマホひとつで何でも勉強できる時代。活用しない手はない。(PIXTA=写真)

最後にひとつだけ注意しておきたい。スマホは手軽に知への扉を開いてくれるが、同時に「単なる暇つぶしの娯楽を提供する」という麻薬のような側面も持っている。たとえばいま流行のオンラインゲーム「パズドラ(パズル&ドラゴンズ)」をダウンロードすれば、いくらでも暇をつぶせてしまう。いわばパチンコ屋的な刺激を与えてくれるものでもあるのだ。

だからこそ、1台のスマホをハーバード大学にするか、ただのパチンコ店にするかは、あなたの“志”にかかっているのである。

(長山清子=構成 的野弘路=撮影 PIXTA=写真)
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