勉強に限界を感じている人、必読! 脳を活かした最新の勉強法を、茂木健一郎氏が伝授する。

「凡人が秀才に勝てるわけない」

私たちはこう思い込んでいる。しかし社会人になってからの勉強次第では、高卒が東大出をさしおいてビジネスで成功するのも夢ではない。

凡人が逆転勝利を収めるには、次の3つが不可欠だ。(1)脳の特性を知ること。(2)まだスマートフォンを持っていない人はすみやかに入手すること。(3)誰かに強制されなくても自分の意思で勉強するという“志”を持つこと。

まずは脳の特性について説明しよう。社会人の大半は「時間がないから勉強できない」と思っている。しかしそれは思い込みにすぎない。大事なのはいかに長時間勉強するかではなく、いかに深く集中するかなのだ。

時間の経つのも忘れるほど何かに夢中になっている状態を指す。このとき、脳と体は最もパフォーマンスを発揮する。スポーツ選手がすごい記録を出すときは、高度のフロー状態に入っているという。瞬時にフロー状態に持っていくためには、集中力を司るDLPFC(背外側前頭前皮質)を鍛えること。筋トレと同じく、使えば使うほどこの回路も強くなるので、意識して集中する訓練を繰り返し行っていると、自然にできるようになる。

人間は最高に集中すると雑音も聞こえなくなり、まったく疲れを感じない「没我」の状態になる。このようにリラックスしていながら、なおかつ集中している状態のことを、脳科学では「フロー状態」という。このフロー状態に自分を持っていくのが、多忙な社会人が勉強するときのポイントだ。

脳の中には「集中しろ」という命令を出す「DLPFC(DORSOLATERAL PREFRONTAL CORTEX:背外側前頭前皮質)」という司令塔のような部位がある。筋トレと同じで、この神経経路は繰り返し負荷をかけることによって太くなる。つまり1日に何度も集中しようと心がけることで、フロー状態になりやすくなるのである。

それにうってつけなのが、スキマ時間を使った勉強法だ。通勤電車の中で、あるいは信号待ちをしながら、あるいは注文した料理が出てくるまでの数分間でも、集中して知識を吸収しようと努めるのだ。ほんの2~3分でも、累積すればかなりのものになる。また、このようなスキマ時間の集中勉強法は、脳の特性にマッチした学習法でもある。なぜならインターバルをあけて何度もインプットを繰り返すことで、学んだことが記憶として定着しやすくなるからだ。「まとまった時間がなければ勉強できない」というのは幻想にすぎない。僕はいま、朝から晩までわずかな時間の隙間を縫って何かしら勉強するようにしているが、その結果、いまや瞬間的にフロー状態に入れるようになった。意識の切り替えが素早くできるおかげでストレスとも無縁である。