ベースにあるのは心と心の通い合い
実はこのテストでは、「信頼性」「共感性」「論理性」(上から各10個ずつ)の力を測っている。それというのも、コミュニケーションとは、信頼から生まれる「感情」、そして「共感」「論理」の3つで構成されているからだ。この3つの頭文字を取って、私は「感共論」と呼んでいる。
もともと「人間は感情の動物」であり、仮に相手の言っていることが正しくても、気に食わない人や気に食わない言い方だと、聞きたくないという気持ちになる。これは人間の持っている防衛本能でもあり、まず相手を好き嫌いで判断する。そして、「この人は信用できるな」と思った後に、初めて話を聞こうという気になるのだ。
ところが、コミュニケーションというと、すぐに「技術」に目が向いてしまう。コミュニケーションのベースにあるのは心と心の通い合いであり、その点をまず理解しておく必要がある。
それでは具体的に診断テストの中身を見てみよう。項目が多いので、ここでは日本人が特に弱いと思われるものに絞って説明したい。まず7番目の設問は代表的な感情性を測定したもので、日本人は往々にして意見の違う人は自分の敵だと思いがちだ。しかし、異なる意見を受け入れることで多様性が生まれ、よりよいものが生まれる。
10番目だが、人間は自分に似ている人に親しみを感じる性質がある。たとえば出身地が同じだと何となく親しみがわく。これは感情を共有できるからである。趣味や食べ物でもいい。共通点が見つかると、特に初対面の場合は打ち解けやすい。
次に共感性。正論だけでは人を説得できず、相手の気持ちを考慮した話し方が重要である。日本人は何かを伝えるときに単調になってしまう傾向が強い。それを確認したのが11番目の設問だ。米国にはさまざまな人種がいて、英語が通じないこともあるので、資料を見せたり、視覚に訴えようとする。
人間は五感(視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚)を使っていろんな情報を集めているが、その中で最も使うのは目だ。米国の心理学者アルバート・メラビアンの「メラビアンの法則」によると、人間の印象をつくる要素は、「言語7%」「言葉のトーン38%」「外見・顔の表情55%」とされている。
論理性だが、日本人は何を言いたいのかわからないことが多い。その点をチェックしたのが、22番と23番の設問。ダラダラ話されるのは一番困る。結論を最初に述べるという習慣をつけることが大切だ。理由はその後でいい。米国人はよく何かを説明するとき、最初に「今日のプレゼンで伝えたいことは3つです」と言う。そうすると聞くほうは、準備ができて理解しやすい。