弱点克服のロープレ活用法

こうした“感共論”に基づくコミュニケーション力をうまく活用して、成功を収めている例を紹介しよう。日本のあるドラッグストアチェーンでは年に数回、栄養ドリンク剤のキャンペーン販売を行っていて、トップの売り上げを誇っているのが、ある化粧品担当の女性販売員。その数なんと1日で1000本。2位の人でも150本程度だから、その凄さがわかるだろう。

その販売力の鍵は女性担当者がつけている「お客さまノート」にある。普通は、誰々がファンデーションを1つ、口紅を1本買ってくださったとかで終わる。しかし、彼女は、ご主人がカゼ気味だとか、お孫さんが入学したとか、会話の中のちょっとした話題を書きとめる。そして、キャンペーンの前に電話をかけ、「お孫さんは元気に学校に通っていますか」といった会話をする。

相手は、そんな話を覚えているとは思わないので感激する。そこでさりげなくキャンペーンのお知らせをすると、「○○さんのためなら」となる。しかも、ご主人と一緒に来て、ケース単位で買っていく。感情と共感を巧みに使ってセールスに結びつけているのだ。

さて、診断テストで弱点がわかったら、そこを強化することが重要だ。点数が低かったとしても、落ち込む必要はない。生まれつきコミュニケーション力の高い人などいないからだ。諦めることなく、改善の努力をしよう。

その際のコツは、たとえば弱点が感情だとして、その中でも自分はどれが一番強くて、逆にどれが一番弱いのかを見つけ出すこと。強いところは徹底的に伸ばす。その一方で、弱いところはいっぺんに修正するのはムリだから、優先順位をつけて、1つずつ克服していく。人間というのは、1つのことに自信を持つと、次の課題にチャレンジする気になるものだ。

その弱みを克服するためには、ロールプレーが非常に有効だ。ただし、仮のシチュエーションでは効果が薄れる。実際の、たとえば企業への売り込みだったら、「○○社の××バイヤーはこういう性格の人で、ウチとの取引状況はこうで」という実際のシチュエーションで行う。そうすると相手の気持ちを理解でき、「感共論」の使い方を呑み込めるようになっていくだろう。

(構成=田之上 信)
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