基礎研究に目を転じると、ポスト抗体医薬品の最右翼は「核酸製剤」だ。リーマンショックで資金源を断たれ、一時期低迷したが、ここにきて復活の兆しが見えている。
核酸とは、遺伝子の材料となるDNAやRNAを指す。治療用の核酸は、がん細胞が自分を複製する際に必要なDNAの翻訳の邪魔をすることで、がん細胞の増殖・転移を抑え込む。不老不死を獲得したがん細胞の「老化」スイッチを入れ直し、増殖を抑制しようというユニークな方法も試みられている。
今後の研究のポイントは、「核酸医薬品をどうやって、がん細胞に打ち込むか」だ。
各社がより効率的なデリバリー・システムの開発にしのぎを削っている。ハードルは高いが、核酸医薬品は製造工程がシンプルで、需給のめどがつけば安く大量に製造できることが何よりの利点。「数カ月の延命に数百万円の負担を強いる」という抗体医薬品の最大の欠点が解決できるのだ。
このほか、がんの大本である「がん幹細胞」をターゲットにした研究も進んでいる。13年4月、理化学研究所から「白血病幹細胞」を標的とした化合物発見の朗報があった。その化合物「RK-20449」を、白血病を発症させたマウスに投与したところ、2カ月後には、ほぼすべてのがん細胞が死滅した。
がん薬物療法は、延命効果や副作用の面で必ずしも満足できる成果を挙げてはいない。「がんとの長期共存」は可能になったが「制圧」までには遠い。次世代へのブレイク・スルーが求められている。