動いて学ぶ、暗闇で学ぶ、演じて学ぶ

昨今生まれている研修を、いくつか紹介してみたいと思います。

(1)動いて、演じて学ぶ系

アスレチックに設けられたチャレンジを仲間と協力しながらクリアすることで「本能」を揺り動かし、信頼関係をつくる「アドベンチャープログラム」。

組織の中で協働する際に欠かせないチームワークや信頼、コミュニケーションといったものは、知識だけあってもなかなか行動につながりません。そこで、体を動かしながら実感を伴った体験を通して学ぼう、という研修が「身体系」の研修です。

たとえば、玉川大学の難波克己准教授が普及に努める「アドベンチャープログラム」は、様々なアスレチックコースに設けられたチャレンジを仲間と共に克服する体験を通して学ぶ教育手法です。チャレンジの中には8メートルの高さからロープを使って降りてくる、チーム全員が高い壁を越える、といった1人で挑戦するには、難易度の高いものがあります。これをやり遂げるには、普段はほとんど話もしないような同僚や年上の上司などとも、声を掛け合い、手と手を取り合って、協力しなければできません。このような体を使った活動を通して、実体験としてチームワークやコミュニケーションを学ぶことができるというわけです。

暗闇空間で、視覚に頼らない体験ができる「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」の企業向け研修も「身体系」といえるでしょう。暗闇の中では、声を掛け合い、触れ合いながら協力して行動せざるをえず、情報共有の重要性や助け合いの大切さなど、様々な気づきを得ることができます。また、視覚以外の感覚を研ぎ澄ますことで、いつもと違うものの見方、発想が生まれる、といったこともあるようです。

演劇を使った研修も広がってきています。たとえば、プロの俳優を「部下」役として、新任マネジャーが、はじめて行う部下面談、考課者面談を実施してみる研修などがあります。

このような「身体系」の研修で一番大切なのは、活動することに加えて、きちんと「振り返り」の時間を持つことです。活動を振り返り、何が起きて、どう感じたのか、どうすればよかったのか、参加者同士が対話することで、気づきを得ることが重要です。くれぐれも、演じて終わり、動いて終わりにならないよう、「振り返り」を大切にしていく必要があります。