目の難病「加齢黄斑変性」は、どう見えなくなるのか

アキュセラはグローバル市場を見据えて、アメリカを拠点に眼科領域を専門に事業展開をしています。医療技術の発展が長寿を可能にしてきたように、これからは視聴覚などの感覚器系の機能を長持ちさせて「クオリティ・オブ・ライフ」を向上させることが求められる時代になりました。眼科領域は高齢化に伴って患者数の増加が見込まれているのみならず、多くのアンメットメディカルニーズが存在する領域でもあります。我々はこの分野で革新的な新薬を開発していきたいと考えているのです。

我々が新薬開発に取り組んでいる病気は、加齢黄斑変性(かれいおうはんへんせい)といいます。何度か本コラムで紹介をしてきましたが、まだまだ馴染みの浅い病名なのではないでしょうか。加齢黄斑変性を発症すると、中心視力が低下してしまうため、お茶を入れたり文字を書いたりパソコンのキーボードを操作したりといった日常的な動作に支障をきたしてしまいます。重度な症状にいたると中心部から見えない部分が広がって視力を失っていきます。

この病気は、まず「ドライ型」を発症します。早期のドライ型を経て、ドライ型のまま網膜の中心部から地図状に視細胞が抜け落ちていく面が広がっていく「地図状萎縮」という症状を引き起こして徐々に失明に向かうケースと、急激に視力を失う「ウェット型」に移行するケースがあります。

ウェット型には眼球に注射する治療薬があるのですが、ドライ型にはFDA(米国食品医薬品局)の承認を受けて上市されている薬剤はまだありません。アキュセラが手がけているのは、この地図状萎縮を伴うドライ型の治療薬候補です。ドライ型とウェット型を合わせると患者数は世界で1億2700万人にも及びます(※)。そのうちドライ型が90%を占め、中期から末期の地図状萎縮をともなうドライ型加齢黄斑変性を発症するのは患者全体の15%と報告されています。

皆さんの周りにも地図状萎縮をともなうドライ型加齢黄斑変性による失明を心配しておられる方々がいらっしゃるのではないでしょうか。なかなか眼科領域の話を見聞きすることは少ないかと思いますので、少し詳しく説明をさせていただきました。我々が挑んでいる世界を垣間見て、理解を深めていただくきっかけになればと思います。

[脚注・参考資料]
※ 2012 MarketScope report, 2012 Report on the Retinal Pharma & Biotech Market, 73-75ページ

窪田 良(くぼた・りょう)●1966年生まれ。アキュセラ創業者・会長で、医師・医学博士。慶應義塾大学医学部卒業後、同大学院に進学。緑内障の原因遺伝子「ミオシリン」を発見する。その後、臨床医として虎の門病院や慶應病院に勤務ののち、2000年より米国ワシントン大学眼科シニアフェローおよび助教授として勤務。02年にシアトルの自宅地下室にてアキュセラを創業。現在は、慶應義塾大学医学部客員教授や全米アジア研究所 (The National Bureau of Asian Research) の理事、G1ベンチャーのアドバイザリー・ボードなども兼務する。著書として『極めるひとほどあきっぽい』がある。 >>アキュセラ・インク http://acucela.jp
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