ギネスブックの「記憶力世界一」記録保持者、エラン・カッツ氏

私は大事なことを忘れないために、よく“もの”を使います。旅先で一度座ってから立ち上がるとき、バッグを忘れぬよう自分の足に“ストラップ”を巻いたり、出かける前にアイロンのコンセントを抜き忘れぬよう、コンセントのところに“携帯電話”を置いたりします。これらも「忘れにくいものと関連付ける」という意味で共通したやり方です。

日本でも多くの方がお悩みという語学についても触れておきます。40歳以上の方が、英語も含めた語学を敬遠しがちな理由は2つ。一つは、さほど学びたいとは思っていない。もう一つは、もう一度何かを1から学び直す過程を、嫌がるというより怖がっているからだと思います。

往々にしてそうしたメンタルな“壁”が学習の邪魔をするのですが、実際は1つの言語において1000の単語さえ覚えられれば、かなりの部分が理解できます。だから、それほど怖がらなくていいでしょう。

覚えるべき1000の単語は、言語名と“1000”“popular words”でネットを検索すれば出てきます。これなら、約1カ月で1つの言語の基礎を学ぶことができます。

あるいは、1週間とはいわず4日間でもいいですから、英語しか使えない環境で缶詰めにされるといい。最初に最も怖い環境に身を置くことで、別に間違ってもいいんだと気づけばいいでしょう。

どんな勉強も、まずはそうして自信をつけることが重要です。乗馬と同じで、最初は乗っては落ちるの繰り返しですが、「できそうだ」と自信がつくところまでいけば、後は学習のスピードが加速度的についてきます。メンタル面の壁を崩して自信をつけるところまでが、学習の過程で最も難しいところです。

記憶力向上のための基本的な考え方 7つのポイント

1 頭の「saveボタン」を押し忘れるな
2 最初に「最も怖い環境」に身を置け
3 脳は同時に1つのことしかできない
4 思い出すときは「もの」を使え
5 馬鹿馬鹿しいほどオーバーな想像力を使え
6 座るより「歩く」「体を揺する」と集中できる
7 単語を1000覚えれば、外国語はほぼOK

エラン・カッツ
ギネスブックの「記憶力世界一」記録保持者。 1965年、イスラエル生まれ。ヘブライ大学卒業、欧州の大学でも学ぶ。98年、記憶力世界一としてギネスブックに掲載。現在、世界中で記憶力に関する講演やコンサルティングなどを行う。著書に『ユダヤ人が教える正しい頭脳の鍛え方』ほか。
(西川修一=構成 石橋素幸、小原孝博=撮影)
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