「損して得とる」戦略はこう極める

私が以前講師をしていた個別指導塾では、常に新規入会の生徒をかき集めるため勧誘電話などの営業に力を入れていた。子供が学校を卒業したり退塾したりしたら、収入が減るからだ。しかし私はほとんど営業しなかった。たまたま卒業生が少なかったこともあるが、新規より今いる生徒に継続して塾に通ってもらうことのほうが重要だと感じたからだ。

塾のお客さんは、生徒とその親である。相手がほしがっているのは、もちろん学力アップ。しかしながら、現実的に子供の学力が一気に引きあがることは難しい。とすれば、まず力をいれるべきは、生徒や親との信頼、塾環境の整備である。

そのために、私は1時間半ほどの生徒の授業内容を親に連絡ノートで端的に伝えるように努めて、親が子供の勉強ぶりをいつも見える形にした。また、子供たちには誕生日であれば、少々自腹を切り、文房具をプレゼントするなどして、他塾にはないような絆を持つように努めた。さらに、学校内で先生に話せないことも、塾内では個別に聞いてあげるようにした。可能な限りの細やかな配慮をすることで、転校など余程の事情がない限り、子供たちが塾をやめることがない状況を作り上げた。

こうした良い塾内環境をつくれば、「誰か、勉強したい人がいたら連れてきて」という子供たちに言うと、たいがい仲の良い友達を誘ってきてくれる。

他教室が勧誘電話やテレアポやポスティングなどに力点を置いて新規生徒獲得の営業で汗をかく行為は、塾にとってはいわば投資でもある。私は、その時間的経済的な投資を、勧誘電話などではなく、マメで詳細な「連絡ノート」作りなどにあてたわけだ。

何に投資して、利益をあげるか。この営業手法はまさに「損して得とれ」と全く同じ戦略を必要とするものだ。

もちろん、塾運営において私のこの手法が永遠に効果が出るわけではないだろう。もし近所に大手の進学塾などができれば、競合分析を見直して、戦略を変える必要がある。

私たちを取り巻く状況は、日々変わりゆく。そうした状況のなかで、いつまでも、過去に成功した手法がいつまでも同じ形で使えるとは限らない。

相手(客)からの信頼を勝ち取るには、先の内職・副業商法のように、常に相手が望むタイミングで「損して得とる」戦略を実行できるかが鍵となる。状況の変化に応じて、物事の優先順位(プライオリティ)をどこに置くかを考えてアクションを起こすことで、最大の効果を引き出せるのである。

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