資格奨励・支援をする企業の傾向

ではまず、【Q1】の結果から見てみましょう。

【Q1】貴社では社員の資格取得を奨励していますか。
a:はい b:いいえ

ここで「a:はい」と回答したのは丸紅や帝人、大和ハウス工業、三菱東京UFJ銀行など47社。回答企業54社の87%に及びました。

逆に「b:いいえ」と回答したのは、富士ゼロックスやサイバーエージェントなど7社。残りの13%でした。

【Q2】貴社では社員が資格を取るための支援を行っていますか。
a:はい b:いいえ

ここは「a:はい」47社、「b:いいえ」7社となり、数字上は【Q1】と同じで、社員をサポートする会社が9割近くに達します。ただし、「資格取得を奨励している」ものの「支援」をしていない会社が1社、逆に「奨励」はしていないのに、「支援」をしている会社が1社ありました。

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Q1/Q2

ここまでで分かるのは、伝統的な日本企業の多くは資格取得を含めた社員の能力開発に積極的ということ。表現を変えると、社内で力を持つ人事部(会社によっては人事教育部)が、社員向け自己啓発の支援を惜しみなく行っている会社が多いということでしょう。

一般に、欧米企業で人材育成というと、技能の育成を指します。対象となる社員が従事しているのが経理部門なら、会計原則の変更に伴う教育プログラムといった形でしょう。

これに対して、長期雇用を前提とする日本企業での育成は、全人格的な範囲に及びます。「新卒者の採用は人物本位。何をもって人物かといえば、将来管理職になれる人物かどうかを面接で判断します」(電機メーカーの人事担当者)

という声も聞こえます。大学や高校の延長の如く、通信教育などを使った自己啓発のための資格取得の勉強まで、伝統的な会社は援助してくれるのです。日本企業の多くは、人件費を固定費と考えていて、入社後の社員への教育投資も比較的大きいのです。

さらに、建設や不動産など業務独占資格が必須な業界では、戦略的にその分野の有資格者を増やしています。

また、次回報告する【Q3】以降にも関わりますが、経済のグローバル化が進む中でTOEICを昇進要件にするなどの動きが国内企業に徐々に広がっています。

ただし、社員の自己啓発を支援するという特性においては、次のようなケースはあります。

「会社の資格取得支援策を使い通信教育を受講し、難関の社会保険労務士試験に合格した。30代の時だった。しかし、定年退職するまで、せっかく取った社労士の知識を生かすことはなかった」(大手機械メーカー元社員)

会社の中で資格を生かすのは、難しい場合もあります。