特定秘密保護法の脅威の検証を!

国内外で「稀代の悪法」と激烈に非難された同法は、昨年12月6日に成立し、同13日に官報で公布された。同法の附則では「公布から1年以内に施行する」と定められている。政府は、その施行日や必要規定を決める「政令」を今秋に閣議決定する計画だ。従って、予定されている施行日は、今秋から12月13日の間ということになる。

「政令には全国的な世論を取り入れた」という体裁をとりたい政府にとって、今秋の閣議決定を前に「勘案すべき国民の意見(パブリック・コメント)を募集」する必要があった。募集期間はわずか1カ月間。その提出期限である8月24日を目前に、内閣官房に設けられた同法施行準備室には「いま、山のような意見が寄せられている」(元経産省キャリア)という。

パブコメ締め切りを1週間後に控えた8月17日、毎日新聞が「『必要性弱い』内閣法制局が指摘 11年政府協議」という“スクープ”を打った。同法の法制化で主軸となった内閣情報調査室に対して、内閣法制局が法の必要性に疑義を呈していたことが明らかになった、という内容だ。法制化後の「いまごろ感」を拭えないこの記事は、法制局の「アリバイ・リーク」ではないかとの疑念もあるが、重要なのは法制局が「法の必要性は弱い」と指摘した事実だ。

「国民のプライバシー侵害」「特定秘密の範囲逸脱」「国会の軽視」「取材・報道の自由の毀損」などが問題視されたにも関わらず、同法はすでに法制化された。内閣法制局も「不要では?」と釘を刺す法律を、安倍政権はなぜ強硬に成立させたのか。その運用を決める政令がまとめられる前に、本サイトを含むメディアは、同法の条文と国民の言動との関係をより明らかにするため、今後も注視し続けていくことになる。国民があらぬ嫌疑で不当に逮捕されないよう、あらためて条文の脅威を検証しておく必要があるからだ。

特定秘密保護法が予定通り年内に施行されれば、来年以降、冒頭のような想定事例が絵空事ではなくなる。

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