コピーは禁止。各自メモを取る
オフィスに掲示される日替わりの情報も前はコピーしていたが、今はメモを取る。ファーストクラスやビジネスクラスの食事メニューも、顧客が置いていったものは廃棄していたが、回収して次回、自分たち用に使う。
「業務報告の書類は1枚0.15円くらい。微々たる金額ですが、成田と羽田を合わせてCAは4500人以上もいます。コツコツといろんなことをやっていくのが大切だと思っています」
燃料は運航にとって大きな経費になる。その削減を担うのがパイロットだ。総飛行時間8000時間(地球約350周)の中堅機長、荒川里留が語る省エネ飛行術は“燃料との戦い”を思わせた。気象条件から最も燃料消費が少なくてすむコースを飛ぶだけでなく、着陸体勢から駐機場で止まるまで、節約の手を休めない。荒川が説明する。
「航空機が着陸体勢に入るには、車輪を出したり、フラップを下ろして翼の面積を広くしなければなりません。その分、抵抗が増し、燃料が消費されます。そこでタイミングをできるだけ遅らせる。フラップの角度もなるべく浅くし、抵抗を減らす。着陸後はエンジンを可能な範囲で弱めに逆噴射させ減速する。駐機場に戻るときも、2つのエンジンの1つを切ってしまう。また、着陸体勢に入る際、前の飛行機をあえて加速して抜くこともあります。一時的に燃料は使っても空港への進入が2、3分早くなる。何よりもまず安全に最大限配慮しながら、さまざまな工夫を重ねると、1回のフライトで燃料が何百キロ、金額にして何万円も節約できます」
JALの就航便は国内線だけでも1日数百便にも及ぶ。効果は大きい。荒川らパイロットが経費削減を特に意識するようになったのは、稲盛流の部門別採算制度「アメーバ方式」により、路線ごと、1便ごとの収支が見える化されたことも大きい。
「われわれパイロットも以前は、お客様に安全と最高のフライトを届けることだけに一生懸命でした。でも今は100円の経費削減が収支改善にどう結びつくかといった目も持つようになりました。フライト中に飲むコーヒーも使い捨てカップから、今はマイタンブラー持参です」(文中敬称略)