人口減少の時代にどう対応するか

【田原】人口減少時代に入り、日本国内の需要はもう伸びないといわれています。これはどうすればいいですか。

【御手洗】自由貿易圏を増やすことが必要だと思います。要するにTPP、あるいはEPA、FTAの推進です。無関税地域が増えるのは、国内市場が増えるのと同じことですから。

【田原】アメリカはTPP交渉で、農産物の関税を撤廃しろと言っている。日本の農業は大丈夫ですか。

【御手洗】規制を撤廃して、農業を企業化することを考えるべきでしょう。それができれば、日本の農業は必ず成長産業として生まれ変わると思います。

【田原】企業化ってどういうことですか。

【御手洗】たとえば休耕田がたくさんあるでしょう。会社をつくって、それを現物出資してもらい、農家の方を株主にするのです。そういった田畑が集まれば、区割りを取り払えるし、その結果大きな面積の農地が増え、機械化をすすめることで、生産コストも下がる。それで生まれた利益を、株主である農家に配当する。そうすれば老齢化に対応することもできるし、農家の方も暮らしていける。私は経団連の会長をしていたとき、これを当時の松岡(利勝)農水大臣に提案したのです。大臣は「それは非常にいいアイデアではないか」と言っていました。

【田原】松岡さんは、農業を守りの農業から攻めの農業にすると言っていました。だから僕も期待していたのだけれど、別の問題で自殺してしまった。

【御手洗】私も話が合っていただけに、実現できず、本当に残念です。

【田原】話を戻します。人口減少では、移民もテーマです。これはどうですか。

【御手洗】きちんとした移民法をつくって、外からの流入も考えるべきです。私はビジネスマンとしてはアメリカ育ちですが、アメリカはさまざまな民族で国が成り立っています。日本も、ある程度は考えてよいのではないでしょうか。

【田原】なるほど。キヤノンとしては、人口減少の時代にどう対応しますか。

【御手洗】まずは省人化です。キヤノンは生産方式をベルトコンベアからセル方式、さらに人間と機械を組み合わせた方式、自動式、ロボットによる生産へと発展させています。そうやって、生産効率を上げていくことが大事です。

【田原】最後にお聞きしたい。日本のものづくりは、今後も期待できますか。

【御手洗】いま日本の工場で働いている社員は極めてレベルの高い人たちばかりです。それゆえに、「ここは自動化したほうがいい」とか、「この材質はこういうふうに変えたほうがいい」とかいうアイデアが現場から豊富に出てきますし、そのことが製造技術のイノベーションにつながっていく。これはアジアの他の国々の工場ではまだまだ難しい状況にあります。その意味では日本の工場自体は自律的な成長が可能ですし、今後のものづくりはまだまだ期待できると思っています。

【田原】わかりました。どうもありがとうございました。

御手洗冨士夫
1935年、大分県生まれ。都立小山台高校卒。61年中央大学法学部法律学科卒業後、キヤノンに入社。創業者の御手洗毅は伯父にあたる。79年キヤノンUSA社長、93年キヤノン副社長、95年従弟の御手洗肇が急死したため、急遽社長に就任。2006年経団連会長、キヤノン会長に就任。10年経団連会長を退任。12年キヤノンの社長に復帰し、会長兼社長。13年旭日大綬章を受章、日本郵政取締役。14年五輪組織委名誉会長に就任。
田原総一朗
1934年、滋賀県生まれ。県立彦根東高校卒。早稲田大学文学部を卒業後、岩波映画製作所、テレビ東京を経てフリーに。幅広いメディアで評論活動を展開。
(村上 敬=構成 宇佐美雅浩=撮影)
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