女性目線が市場ニーズを顕在化させた
「車に乗る際には毎回日焼け止めクリームを塗っている」といった声も聞かれ、そこから浮かび上がってきた課題が「紫外線の100%カット」だった。すでに90%カットできるドアガラスは出ていたものの、それでも無防備に長く車に載っていると、日焼けが気になるという声もあった。実際、小島さんは自分の腕を使って日焼け具合を実験して、90%カットでは効果はまだ低いと感じていた。
さらに、「ママさんドライバー」「高級車の保有者」などカテゴリーを分けてグループインタビューを実施したところ、「化粧品などに紫外線カットの効果を期待するのと同様に、紫外線を100%カットできるのならば2万円~3万円くらいはお金を出してもいいという意見も多かった」(小島さん)
すでに衣類や化粧品は「紫外線カット」が付加価値になっている。こうした調査を経て紫外線を全面的にカットする自動車用ガラスにも「市場」があることが分かったことで、開発にゴーサインが出た。ところが、実際の開発現場では超えなければならない「課題」も浮上した。
紫外線を99%カットする自動車用ガラスはすでにフロントガラスに採用されていた。事故時の安全対策もあって、割れた際にけがをしないように、薄いガラスとガラスの間に樹脂を挟んで張り合わせる工法で、その樹脂にUV吸収剤を練り込んでいくことで紫外線を99%カットすることはできたが、張り合わせずに作るドアガラスでは、ガラスの組成だけで完全に紫外線をカットするのは無理だった。
そこで、ガラスの表面に高性能なUV吸収膜をコーティングする手法を採り入れ、完全カットを実現しようとした。ところが、ドアガラスは昇降させるため、コーティングに傷が付いて耐久性などに問題が生じた。その課題をクリアするために社内では、ガラス事業と化学事業の連携や、プロジェクトチームと中央研究所や生産技術の連携といった部門の壁を超えた協力が始まり、試行錯誤を繰り返して新製品が誕生した。