こう考えたのは、6つの部署を渡り歩き、トレーダー以外、すべての職種を経験した野村証券時代の私の個人的経験が影響しています。当時の野村も、今のゲーム業界も、ほとんどの社員が最初に配属された部署でずっと仕事をしますから、会社全体の業務の流れがまるでわからない状態になってしまう。自分の部署の仕事が回ればよい、あとは“野となれ山となれ”では、顧客に喜んでもらえる価値を創造することができません。これを何とか変えたかった。昔の日本の工場ではよく、働く人が自分のラインだけでなく隣のラインも気にかけたものです。
(2007年1月29日号 当時・社長 構成=荻野進介)
奈良雅弘氏が分析・解説
ここで紹介したのは「理解させることで他人を巻き込み、束ねる」という、「認識アプローチ」と呼ぶべき手法である。
和田氏が行ったのは、要するに「会社が一つの有機体であること」を社員に徹底したということである。有機体の一員である以上、自分のことだけでなく、つねに全体の利益を考える姿勢が社員に求められる。
和田氏は、その徹底を、あえて合併時に実施することにより、社員に新会社を「わが社」として認識させ、そこに巻き込み、束ねていこうとしたのである。
1959年生まれ。東京大学文学部卒業。人材育成に関する理論構築と教育コンテンツ開発が専門。著書に『日経TEST公式ワークブック』(日本経済新聞社との共編、日経BP)がある。