さらに、中央銀行だけでなく、世界の投資家も今、金に高い関心を示している。貴金属アナリストの亀井幸一郎氏は、かつて金の需要の8割は宝飾品関連だったが、09年に入ってからは投資需要がそれを上回るようになってきたと語る。

「欧州では、かつて年間数トン程度だった個人の金投資額が、資産保全目的で100トンを超えるところまで増えていますし、ヘッジファンドもETF(上場投資信託)を通じて積極的な金買いを進めています。また、海外の金価格は高値圏ですが、国内価格に目を向けると、最高値をつけた98年1月の平均値5200円前後から見ても、まだかなり安い」(亀井氏)

ここしばらくの「円高・ドル安」基調が国内金価格を押し下げているが、近い将来、国債発行残高が増加の一途を辿る日本の財政問題をきっかけに円が売られれば、国内金価格は一気に上昇に転じることも十分に考えられると亀井氏は語る。

ファンドマネジャーとして金の動向に詳しい、ワカバヤシFXアソシエイツ代表の若林栄四氏は、海外金価格そのものにも、まだ上昇余地があると語る。

「6~8月にかけて1300ドル台まで上がるのでは、さらに、11月から来年1月にかけて1400ドルまで上がるというイメージで見ています」(若林氏)

国内の金価格を左右する為替レートについても、若林氏は「基本的には円安に向かうと考えています。7月から8月にかけて、1ドル=97円もあるかもしれません」と見ている。

ギリシャの財政破綻問題に端を発した欧州通貨安の影響で、ユーロ建て、あるいは英ポンド建ての金価格も過去最高値を更新してきた。それに比べ、円建ての価格は、主要国通貨建ての金価格が過去最高値を更新してもなお、過去の高値圏から6割程度の水準で推移している。とすると、今後、予想される円安によって、円建て価格はさらに押し上げられる可能性がある。投資商品としての金の輝きはまだ失われていないといってよいだろう。