ところが十分な資産があると予想される役員クラスでも老後の経済的不安を感じている(図2)。不可解な現象に藤川氏は「不安が漠然としているからだ」と理由を述べる。
「何億円もの資産をお持ちの方ですが、老後の資金が不安だとエコノミークラスに乗ってヨーロッパへ旅行し、『腰が痛くなったからもうコリゴリ』とこぼしていました。でも老後のキャッシュフローをシミュレーションし、『年間1000万円使っても大丈夫なんですから、ビジネスクラスで旅行してくださいよ』とお話ししたら安心した様子でした。老後に必要なお金を試算して数値化すればお金の心配は減ります」
役員とは違いまだ十分な資産が乏しい若手に12年より給料が増えたという明るいデータがある(図3)。
「企業は第2弾の給与引き下げで確保したお金を若手に回したのが数字に出ていますね」(藤川氏)
若手を中心に少し懐が温かくなってきた昨今、お金は趣味や教養、娯楽、旅行に使いたいと思っている(図4)。藤川氏は「適切なお金の使い方だ」と感心する。
「給料を増やしても、多くの会社は賞与や残業代で、いつでも調整できる仕組みを整えています。変動要素で増えたお金は使い道も変動的に考えるべきなのです。増えた分を趣味や旅行などの変動的支出に当て、車や保険、光熱費などの固定的支出は節約しようと考えているのが賢い。ただ、外食費を節約したい人が多いのが解せません。食べることが楽しみでなくなっているのか、デフレ下でずっと我慢していた旅行にお金を回そうと考えているのか、それても調査期間中に有名ホテルのレストランなどで食材偽装が発覚したことの影響か……」