「スカイアクティブG」という技術により、10・15モードでリッター30.0キロメートル、JC08モードならリッター25.0キロメートルを実現したガソリンエンジンは、11年6月発売の小型車「デミオ」にまず搭載される。その後、12年2月発売の「CX-5」には、ガソリンエンジンに加えディーゼルターボの「スカイアクティブD」を搭載。ディーゼル乗用車がまったく売れていなかった日本に、クリーンディーゼルという新市場を創出したのは、日産やホンダ、フォルクスワーゲン(VW)ではなく、いまのところはマツダである。
「アテンザ(マツダ6)」(発売は12年11月)もガソリンとディーゼルが、さらに今回の「アクセラ」は国内向けではトヨタから供与されたHVも加わる。3つのパワートレインを一車種でラインアップすること自体、日本メーカーでは初めての試みだ。「マツダには競合車がありません。自分たちの価値を世界に提供するのです」と猿渡は話す。
10%の“マツダ好き”だけを狙っていく
スカイアクティブ技術を生み出したマツダの「モノ造り改革」とは、どんな手法で展開されたのか。
営業領域総括の毛籠(もろ)勝弘常務執行役員は、次のように説明する。
「15年における会社像、エンジンや変速機といった技術、そして商品である車の理想型をそれぞれに想定。これら15年のあるべき姿から逆算して、例えば10年ならばその年に何をするべきかを描き、全社に落とし込んでいったのです。技術、マーケティングといった垣根を越えて全社が横につながる形にするのがポイントでした。各現場は、これに基づいてPDCAを回していく」
防府工場長などの経験を持ち13年6月に社長に就任した小飼雅道は、「フォードとの関係が薄くなる過程で、(06年当時)マツダは単独で生き残る道を探る必要があったのです」と打ち明ける。
ちなみに、マツダにおける米フォード・モーターの持ち株比率が33.4%から13.8%となったのはリーマンショック直後の08年11月。「この時点でフォード傘下ではなくなり」(マツダ幹部)、09年に同11.0%、10年11月には同3.5%に減っている。
世界の自動車市場8000万台強のうち、マツダのグローバル販売は133万5000台(14年3月期見込み)と現実は2%にも満たない。レクサスのようなプレミアムブランドがあるわけでもなければ、スズキのインドのような圧倒的なシェアを持つ巨大市場があるわけでもない。