またよく指摘されるのは、すべてがIT業界で、成長著しい企業であることである。確かに、こうした人事制度は、企業が成長していないとなかなかうまく機能しない。例えば、新卒社長を数多くつくろうと思っても、事業が成長していないのでは、なかなか難しい。
さらに社員構成もカギかもしれない。20~30代の技術系人材が多いということも重要だろうし、またIT系の人材は、ほうっておくと流動性が高くなり、リテンション(人材の維持)が難しくなるという特徴がある。
だが、私は、こうした企業の努力を、単に業界が成長しているから可能だ、働く人にIT技術者が多いからと片づけてしまうのはあまりにも残念な気がするのである。いや、こうした業界だからこそ、多くの企業が乱立し、なかには人材マネジメントの失敗で淘汰される企業も多いだろう。今回紹介した企業は、人材競争に打ち勝って、業界で成長を続けている企業なのである。
では、何が優れているのか。私は、大きく考えてこれらの企業による人のマネジメントには、5つの共通項があるように思う。
第1は、すべての企業が、人の成長と事業の成長を両立させることについて遠慮がない。例えば、サイバーエージェントの新卒社長の仕組み。若いうちに経営経験を積むことが大切なことはよく知られたことだが、これはかなり極端である。また数も多い。こうしたなかから、将来の事業を担う人材を発掘し、育成する方針が明確だ。またその過程で事業も育つ。
また、サイボウズの独立支援制度。会社の雇用責任を守るために、人材に独立可能になってもらうことと、スピンオフによる事業成長を両立させている。
事業の成長のためには、人の成長がなくてはならないということは昔から言われてきた。だが、このことを両立させるのは難しい。これらの会社では、工夫に富んだ施策で、会社の成長と人材の成長との二兎を追っている。