しかし、よく考えると、そのポストに求められる能力は、2人の能力よりもはるかに高いことが多いのです。1年後を考えたとき、現時点の能力の差は微々たる違いにすぎないかもしれない。若ければ若いほど、伸びますから。
「いま誰の能力が高いか」ではなく、「最もポテンシャルが高いのは誰か」を考える。1年後や3年後の姿を想像する必要があります。だから、私はよく「今日の能力で人材配置を考えると危ないぞ」と周囲に話しています。
私の父はいまだに私を子ども扱いします。同じように、新卒からずっとみているような社員は、どこかまだ力不足にみえる。でもそれは正しい評価ではないかもしれません。客観的な目でみる力を持たないと、人材を見逃してしまいます。
優秀な人材には、つい頼りがちになります。しかし、その結果、若い人が新たなポストにつけず、成長を阻害してしまう恐れがある。社内ではそういう存在を「ブロッカー」と呼んで、戒めています。
今日自分を助けてもらえる人に頼っていると、ブロッカーはいつまでも発見できません。一見すると優秀だけど、よくみると部下が育っていない。そんな人はブロッカーだといえます。
後進を育てるというのは、自分のために行うものなんです。自分がもっと伸びるために、いまの自分の仕事を任せられる人をつくる。後継者ができると自分の居場所がなくなる。そんな考え方の人は、それ以上伸びません。後継者を育てた人にこそ、次のチャンスがあるのです。
1948年、長崎県生まれ。東海大学工学部卒業。72年日本NCR入社。その後、横河・ヒューレット・パッカードなどを経て、90年アップルコンピュータジャパンへ。同社社長を経て、2004年日本マクドナルドへ入社。05年より現職。
[座右の銘・好きな言葉]特になし
[最近読んだ本]大鹿靖明『堕ちた翼 ドキュメント JAL倒産』(朝日新聞出版)
[ものごとを考える場所]自宅の書斎。または毎朝のジョギング
[顧客の声を知る手段]店舗を視察するときにお客様の目をみる