女性活用すべき理由[2]
女性の着眼点はイノベーションの源泉だから
「女性活用」が業績という「数字」に表れなくても、「商品開発やサービスにつながる事例が最近多い」とは、日本総研・ESGアナリストの小島明子氏である。
例えば、大垣共立銀行が近年、個人顧客数と残高が増加した主な理由は、女性にある。女性従業員の発案による女性向けの離婚関連費用ローンやシングルマザー向けローンなど、女性の自立を支援する商品づくりに07年から取り組み始め、その後も同性だからこそ発想できるサービスを次々に打ち出したのが功を奏した。
「女性向けの新しい金融商品の開発に加え、女性顧客を囲い込むためのブランド構築に成功した例だといえます」(小島氏)
住宅メーカーのエス・バイ・エルも、「女性活躍推進チーム」を07年に発足し、女性らしいきめ細かい視点で新しい住環境の提案を継続している。キッチンやリビング、玄関、洗面所などにおける使い勝手のいい収納方法などがそれだ。
「子育てや仕事に忙しい女性に向けた、家事に対するモチベーションをあげるアイデアが豊富です。これもやはり女性ならではの発想でしょう」(小島氏)
こうした女性の商品・サービス開発力が企業の競争力向上につながる、と考える経営者は増えている。東京証券取引所が経産省と共同で選出した「ダイバーシティ経営企業」(表参照)でも事例が数多く報告されている(ダイバーシティ経営は性別・年齢・国籍など多様な人材を活かす戦略)。
昨秋、IMF(国際通貨基金)の女性専務理事ラガルド氏は「急激な高齢化による日本の潜在成長率の低下に歯止めをかけるには、女性の就業促進が鍵」「日本の女性労働力率が他のG7並みになれば、1人当たりのGDPが4%上昇」と述べた。
このことを、前述した国内企業の女性社員の視点によるイノベーションとともに考えると「女性という武器」を使わないのは損という結論になるかもしれない。
黒崎美穂
ESGデータスペシャリスト。 国内外の企業のESG(環境、社会、ガバナンス)データの収集・分析を担当している。
小島明子
創発戦略センター ESGリサーチセンター所属。SRI(社会的責任投資)型運用における企業評価などが注力するテーマ。