教育系NPOがなぜ就職人気1位か
【田原】TFA出身者は一流企業に採用されやすいという話も聞きます。それも人気の要因の一つではないですか。
【松田】そうですね。実際にいま多くの企業がTFAと採用面でのパートナーシップを取っています。それを目当てに応募してくる人もいます。
【田原】アメリカには、タックス・ヘイブンを利用して租税回避する巨大企業がたくさんあります。また金融でも、きわどいことをやって大きくなった会社は多い。僕がよくわからないのは、TFAで社会貢献しようとした人が、そういう企業に就職することです。矛盾は感じませんか。
【松田】そういった企業に進む人は少ないです。TFAで働き始めたとき、ずっと教育分野で仕事をしたいと答えた人は6~7%しかいません。でも、2年のプログラムを修了後、卒業生の約7割は何らかの教育関連の仕事に就きます。つまり最初はTFAをキャリアパスの1つとして考えている人も、教育現場で子どもたちと向き合ううちに、他人事でなくなり、引き続き教育分野で働くことを望むようになるのです。
【田原】なるほど。そこは誤解していました。でも、あえてもう1度聞きたい。NPOはほかにもいろいろある中で、どうして教育系NPOであるTFAが人気なのか。どう思います?
【松田】うーん、大きな文脈でいうと、アメリカでは、国をつくるのに教育が重要だということが広く認識されているからでしょうか。
【田原】そこなんです。アメリカはやはり資本主義の国で、だからこそ資本主義の危険性をよく知っています。危なさがわかっているから、一方で教育を重視するんです。僕はいまTFAが人気になっているのも、アメリカ社会がおかしくなっていることの裏返しじゃないかと思う。1%の人が99%の人を犠牲にして富を独占している状況に危うさを感じているから、関心が教育に向かうんじゃないかと。
【松田】そうかもしれません。じつはアメリカでTFAの就職ランキングがぐっと上がったのはリーマン・ショック直後なんです。あの事件が多くの学生の価値観を変える契機になったことは間違いないと思います。