これからの経営で大切なのは、物事を決断するスピード。例えばユニクロ(ファーストリテイリング)の柳井正さんや楽天の三木谷浩史さんなどは、それをよく理解している経営者の好例だ。
彼らは、会議の前日であっても、「こういうことをやろうと思う。今から調査しろ」と電話で役員に指示する。必要ならアメリカでもどこへでも行け、会議の出席は電話で構わない、すぐ調査しろと。そして翌日には決める。決定のプロセスがわずか1日、などというケースは日常茶飯事だという。
ところが、一般に上場企業のサラリーマン経営者は、何か物事を決めるのに半年も1年もかかる。決断した頃には世の中が変わってしまう。なぜそうなるかというと、経営者も役員も冒険をしたがらない。責任を取りたくないからだ。
ユニクロの柳井さん、楽天の三木谷さん、あるいはソフトバンクの孫正義さんらは、独裁的経営者と言われるが、そもそも責任の重さと影響力は比例する。彼らが傍から見て独裁的に映るのは、経営責任を果たさんがために、強い影響力を行使しているからだ。
例えばユニクロは、05年から11年までに、売り上げを3倍に伸ばしている。柳井さんは、「20年までに売り上げを5倍伸ばす」と言うが、これもスピーディーな決断と、部下に対する強い影響力があればこそ。加えて「業界の不景気など関係ない。ウチはユニクロだ」と、外部環境を言い訳にする気など微塵もない。責任はすべて経営者が負っているのだ。
もう1つ、経営者の大事な仕事は、危機感、問題意識を共有することだ。日産を立て直したカルロス・ゴーンさんは、最高経営責任者に就任したとき、役員たちに「業績不振の原因は何か」と問うた。
すると役員たちは「政府の経済政策が間違っている」「景気の低迷で消費が萎縮している」などと口々に答えた。ゴーンさんは、次の質問をした。「では、トヨタやホンダは、なぜ売れているのか」と。すると、役員たちは誰もその質問に答えられなかった。