今回のケースでは、特定の識別番号を長期にわたって追跡できないなどの工夫をしている。提供先の日立側で照合して特定の個人を識別することが容易かどうかというと、岡村弁護士は「匿名化して提供すれば個人情報にあたらなくなるとしても、どの程度匿名化すれば足りるか、見解が未確立です」という。
ただ、個人情報にあたらなければ何をやってもいいわけではない。岡村弁護士が問題視するのは、JR東日本の説明不足だ。
「個人情報保護の規制がかかるのは、提供先の日立側でなく、提供元のJR東日本側。ところが今回騒ぎになってすぐ対応したのは日立で、JR東日本はしばらくだんまりでした。国交省と協議した結果ようやく少し説明しましたが、説明が足りず、本当に氏名などのデータを切って売ったのかどうかのプルーフ(証明)もない。これでは利用者が不信感を持つのも当然です」
JR東日本は、外部提供データから希望者の情報を除外するオプトアウトの受け付けを7月から開始した。9月1日時点でオプトアウトを申し込んだ利用者は約3万9000件にのぼった。これだけ多くの利用者がノーを突きつけたのも、JR東日本の姿勢に疑問を持つ人が多かったからだろう。
ちなみにオプトアウトは、インターネット、メール、電話で申し込むことが可能だ。