カリスマ的指導者は中国では出ない

彼らは「国家の核心的利益」という言い方をしているが、要は共産党一党独裁という国体を守るための“確信的利益”なのであり、1歩も譲れないのである。

歴史的に見れば、抗日戦争で勝利したのはどう考えても蒋介石(或いは国共合作+連合軍)であり、戦勝国が集まったヤルタ会談でもカイロ会議でも毛沢東は招待されていない。毛沢東が中国本土を支配し、蒋介石を台湾に追い出したのは戦争が終わって3年以上経った48年であった。この簡単な論理の整理さえ行われていないのは、譲ったが最後、戦後一貫して国民に説明してきた自らの存在理由、そして一党独裁の正当性、が否定されてしまうからだ。だから、今の中国ではそもそもそうした確信的利益を譲るようなリーダーは選ばれない。

中国共産党が全国の土地を所有し、民主主義ではなく一党独裁を正当化する「抗日戦争で中国人民を植民地支配から解放したのは共産党」というレトリックを考えると、彼らが歴史を直視しない限り日本との関係が友好的かつ互恵的になることはありえない、と知るべきである。だからこそ日中平和友好条約の交渉に当たった田中角栄・周恩来は多くの懸案を棚上げにした。

最近の調査で「修復しがたい敵意」を相手に対して持っている人が日本・中国とも90%という信じられない悪循環に陥っている原因は、尖閣国有化だけではなく、中国共産党の事実を歪曲した広宣活動がその根底にあると知るべきだ。ソ連と比べるとその点がかなりクリアになる。ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)で旧ソ連を否定し、解体に導いたゴルバチョフ、その後のエリツィンやプーチンのようなカリスマ的指導者は中国では出てこない。

習近平国家主席は日本との関係改善に前向きな気持ちを持っているが、後ろから刺される恐れがあるためにリスクが取れない、という情報もある。刃物を突き付けているのは軍事利権とエネルギー利権の関係者である。彼らは日本との関係が悪化すればするほど、予算が取れるから、日中対立を煽っているのだ。