10年前に、『チャイナ・インパクト』という本を書いた。

成長著しい6つのメガリージョン(省をまたいだ巨大経済圏)が競い合うようにして勃興してきた中国経済。政治的には共産党一党独裁ながら経済的には中華連邦化が進む現状と今後を分析した内容だ。これからは中国を“上手く使えるか”どうかが企業の優劣を分ける。チャイナ・インパクト(中国の衝撃)を自己変革のきっかけにせよ、と中央集権の頸木から逃れられずに低迷する日本および日本の企業経営者に向けて提言した。

その後、同書で予測した通り、中国は長足の成長を遂げて、自他ともに認める経済大国になり、日本企業の中国シフトも進んだ。

しかし10年のワンサイクルを経た今日、中国の巨大市場としての魅力は減退し、逆にカントリーリスクが顕在化し、中国経済はいつバブルが弾けてもおかしくない状況だ。労働コストの上昇で、中国の生産拠点としてのメリットは失われつつある。逆に政治家や役人の腐敗、先進国から大きく遅れた法整備、当局の不条理な規制や指導など、爆発的な成長の陰に覆い隠されてきた中国経済の暗部が露わになり、チャイナリスクがクローズアップされるようになった。

特に邦人企業の場合は、戦後の歴史問題のために、反日運動や嫌がらせの標的になりやすい。日本政府が尖閣国有化を言い出したときに、さまざまな対日報復措置の指揮を執ったのが習近平国家主席(当時は国家副主席)だった。習近平体制は今後10年続く可能性もあり、当面、日本の企業に中国で浮かぶ瀬はなさそうだ。そのような視点に立って、企業経営はアジア戦略を見直す、リバランスする作業が必要ではないか、と思う。カントリーリスクの高い中国のウエートを落として、今後、10年、20年、中国で何が起きても耐えられるくらいまで中国依存を減らし、ほかのアジア諸国の配分を高めていくべきだろう。