悲劇や不運は、必ず私たちの前にやってきます。そのときにこそ、叡智と自信を持って、困難に立ち向かわなければなりません。今回の悲劇は、より一層の情熱に、力に、決意に転換されなければならないのです。それが、今できることなのです。

これからは、地球温暖化の影響で、津波が頻繁に起こるようになるかもしれません。だから、新しい村や町をつくるときには、より高い土地に再建したほうがいいと思います。低い土地は、よりおいしいお米を生産するために使うのです。そうすれば、将来、また津波に襲われても、経済的なダメージは受けますが、人の命は救われます。これが私の意見です。

アメリカで大型ハリケーンによる大災害が発生したときにも、同じことを言わせてもらいました。

今まで暮らしていた土地には愛着があるでしょうし、戻りたいと思っている人も少なくないでしょう。しかし、新しい土地、より高台に移ることを、今こそ真剣に考えたほうがよいと思います。

日本人には、素晴らしい協調精神があります。お互いに助け合うということに、優れた感覚を持っている。そして、心が非常に強い。強靭な精神力を備えています。

ですから、あなたたちは「この困難を乗り越えていける」「私たちは、自分の家を、そして町を立て直せる」と自信を持ってください。あなたたちは今、日本の能力を、日本の才能を、世界中に見せるよい機会を得たのです。

幸福な町を再建した後、私を招待することを忘れないでください。そのとき、私は来ます。大きな祝祭をしましょう。

チベット仏教最高指導者・法王 ダライ・ラマ14世
1935年、チベット東北部のタクツェルで生まれる。38年に第13世ダライ・ラマの生まれ変わりと認定され、40年に第14世ダライ・ラマとして即位する。中国当局との関係悪化により、59年にインドへ亡命。89年にノーベル平和賞を受賞。2011年、亡命チベット人による選挙の結果選出された首相に政治的権限をすべて委譲する。
(樺島弘文=構成 小倉和徳=撮影)
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