冬季に流行する季節性インフルエンザは薬が効く。しかし新型インフルエンザは薬が効かない。しかもアジアを中心にこの20年で860人の患者と454人の死亡者が出ている。平均死亡率は50%強だ。川崎医科大学の尾内一信教授らは「ヒト同士で感染する新型インフルが流行することは避けられないだろう」という――。(後編/全2回)

※本稿は、三瀬 勝利ら編著『ワクチンと予防接種のすべて 第3版』(金原出版)の一部を再編集したものです。

致死率50%強といわれるH5N1インフルエンザをご存じか

2019年2月現在、わが国で承認されているインフルエンザワクチンは2種類のものに分かれます。

このうちの1種類は、冬期に流行を繰り返している「季節性(通年型)インフルエンザ」に対するワクチンです。そして、もう1種類は2007年に初めて承認された新型インフルエンザ(高病原性インフルエンザ;H5N1型)ワクチンで、将来発生するかも知れないH5N1型高病原性インフルエンザの流行に備えるためのワクチンです。

わが国では幸い、H5N1型インフルエンザウイルスの犠牲者が出ていませんが、1997年以降、香港を含む中国、ベトナム、タイ、インドネシア、トルコ、イラク、エジプトなどで散発的に患者や死亡者が報告されています(図表参照)。2017年9月までに860人の患者と454人の死亡者が出ています。平均死亡率は50%強という高さです。

特に、インドネシアで拡散しているH5N1ウイルスは、際立って病原性の強いタイプであると推定されます。2005年から10年近くの間は、患者の発生に強い歯止めがかかりませんでしたが、その後は幸い、患者の発生数が減少しています。こうした事態が続くことを願っています。