健康で長生きをするにはどうすればいいのか。『医師のぼくが50年かけてたどりついた 長生きかまた体操』(アスコム)を書いた医師の鎌田實さんは「毎日を元気に過ごすには、年齢を重ねても筋肉を維持することが欠かせない。その鍵を握るのがたんぱく質だ。手軽に手に入り、みそ汁に入れるだけでいい“スーパーフード”がある」という――。
味噌汁を飲む
写真=iStock.com/kumikomini
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朝はたんぱく質を摂ることが大事

いつまでも健康で長生きしたい。それは、多くの人が持つ願いだと思います。ぼくの考える「長生き」とは、90歳を過ぎても元気で、自分の足でレストランや日帰り温泉に行って楽しむことです。

ぼくは今77歳で、現役医師として地域医療に携わっています。作家としても年間8冊ほどのペースで執筆活動をおこなっており、出版の予定は2年先まで入っています。趣味はスキー。冬になると毎日のようにスキー場に通い、昨シーズンは70日ほど滑りました。

冬になるとスキー場に通う医師・鎌田實さん(77)
本人提供
冬になるとスキー場に通う医師・鎌田實さん(77)

こうして毎日元気に過ごせるのは、筋肉を保持してきたから。それを支えているのが、朝食です。

ぼくは意識的に、朝食でしっかりとたんぱく質をとるようにしています。これを「朝たん」と呼び、長年推奨してきました。その理由は筋肉にあります。40歳を過ぎると毎年1%ずつ筋肉が減っていくといわれています。特に中高年の女性はフレイル(筋肉が虚弱の状態)になりやすく、そのまま要介護状態につながってしまうケースが少なくありません。

フレイルを予防するには、筋肉を維持・増やすと同時に、筋肉の材料となるたんぱく質をとることが大事。3食のなかでバランス良くたんぱく質をとるのが基本となりますが、効果をより高めるタイミングが朝なのです。

“朝食抜き”はリスクだらけ

時間栄養学の研究により、たんぱく質は夜よりも朝にとったほうが筋肉に変わりやすいことがわかっています。また細胞を肥満化させる時計遺伝子「BMAL1」は、22時ごろから増加。そのためBMAL1が多いときに食べ過ぎると、脂肪をため込み太ってしまいます。しかし朝はBMAL1の働きが比較的弱いため、食べた分を筋肉に変えられる、ということです。

実際に、高齢女性を対象にした調査(長崎大学と早稲田大学を中心とする研究グループによる調査報告)では、夕食よりも朝食でたんぱく質を多くとった人のほうが、骨格筋指数や握力が高いという報告もあります。ところが最近は、年齢を問わず朝食を抜く人が増えています。特に若い女性は朝ごはんを食べなければ1日のカロリーが減ると思い込んでいる場合が多い。

しかし、それは大きな間違いです。朝食を抜くとエネルギー不足になり、筋肉が減ってしまいます。また空腹時間が長くなり、その後の食事で血糖値が急上昇。かえって太りやすい体質になるばかりか、糖尿病や動脈硬化のリスクも高くなるのです。

ですから健康な体をつくるには、朝からしっかり食べることが必須。バランスは「朝4:昼4:夜2」の割合が理想的です。朝食をもっと充実させ、夜に食べる量は控えめにする意識をもつようにしましょう。