教育事業の「自殺行為」

BBT大学も大学院も今はほぼ完成形に近い。サイバー教育だからいくらでもスケールは大きくできるが、これ以上学生数を増やすつもりはない。多くの通信大学、サイバー大学では卒業率は一桁だと言われているが、我々は大学院の場合卒業率が85%。これをできれば90%にしたいと思っているので、母数を増やすことは自殺行為に等しい。一人一人に目が届かなくなるからだ。

サイバーでコンテンツを売るだけなら、いくらでも売れる。しかし、我々がやっているのは教育であり、目的とするところはグローバル人材の育成である。

TOEICで900点取ったからといって英語でビジネスの実務がこなせるわけではない。実務がなかなかできない人は、その人なりの個別の原因があるわけで、そこを含めて指導していく必要がある。

リーダーシップの育成にしても、IQとEQだけで手離れのいい教育はできない。ある程度まではイージーオーダーが可能かもしれないが、最終的には個人の資質や能力にフィットしたリーダーシップを発揮する方法をカウンセリングできなかったら、本当のリーダーシップは身に付かない。

ウォーレン・ベニスのリーダーシップ論を読めば誰でもリーダーになれるかといえば、そうはいかないのだ。

教育事業である以上、スケールを求めるべきではないと私は考える。我々は一人一人の論文を精緻に審査しているが、講師の目が届く範囲はいくら手分けしてもせいぜい100人、というところだろう。

事業のスケールを拡大するつもりはないが、中学・高校教育まで手掛けるなどBBTはかなり重層的になってきている。

今後はコミュニケーション力の問題などがあるのでもう少し若い方向に展開する予定だが、急がない。ここは腰を据えて取り組みたいと思っている。

(次回[当連載最終回]は「これから私は何をするか-3-」。7月1日更新予定)

(小川 剛=インタビュー・構成)