国内鉄鋼大手で設備削減の動きが止まらない。神戸製鋼所は、鉄鋼メーカーの中核設備である高炉の休止に踏み切る。最大手の新日鉄住金も2015年度末までに1基を休止する。11年に1基を休止した第2位のJFEスチールを含め、生産体制見直しが一気に加速してきた。
神戸製鋼は5月29日、鉄鋼事業の構造改革計画を発表。赤字続きの事業の立て直しが狙いで、高炉の休止をその柱に位置付けた。同社は現在、神戸製鉄所(神戸市)と加古川製鉄所(兵庫県加古川市)の2製鉄所を構え、17年度をめどに神戸に1基ある高炉を止め、粗鋼生産を加古川に集約する。同社の高炉休止はほぼ30年ぶりで、生産能力は約2割減。神戸で1基、加古川に2基ある高炉の年間生産能力は計700万トンで、神戸の140万トン程度が余剰としている。
今年4月に就任した川崎博也社長は、鉄鋼事業について「再度、国内収益基盤を強化する」と語っており、高炉休止の決断はその決意表明。29日の会見でも、自動車をはじめ国内の大口需要家の海外生産シフトが進み、「鉄鋼の内需減少が避けられない」と、縮む国内市場に向き合う構造改革の姿勢を鮮明に打ち出した。
新日鉄住金は君津製鉄所(千葉県君津市)にある3基の高炉の1基を15年度末までに休止する。JFEも11年に西日本製鉄所福山地区(広島県福山市)に4基あった高炉の1基を休止した。かつて「産業のコメ」といわれ、日本のもの作りを支えてきた鉄鋼大手に高炉休止が相次ぐ背景は、川崎社長の指摘どおり、大口需要家の国内生産が頭打ちのためだ。「アベノミクス」で円高修正に転じたとはいえ、需要家の海外生産移転の流れは止まらず、国内にしか高炉を持たない鉄鋼大手が現状を維持するのは困難な状況にある。
神戸製鋼の場合、鉄鋼事業は国内3位ながら、アルミ、銅や建設機械など多様な事業を抱える。さらに円高修正で輸出競争力が持ち直した自動車向けのウエートは高い。それでも高炉休止に二の足を踏んではいられない。輸出に活路を見出そうにも、世界規模での過剰供給で市況が悪化するなか、採算を無視した中国勢らとの競争に巻き込まれれば、傷口を広げるばかりだ。化学、石油精製、製紙といった素材産業も、国内市場の縮小で設備削減に動いており、鉄鋼大手の動きはその象徴でもあるようだ。