「間違いなく下心はスープに出ます」
●「ほかの知識が入ると考え方が濁る」
独立前に他店でもう少し修行しようとしていた弟子を師匠が諫めた言葉。両方のいいところ取りすれば、メニューの幅も広がるという考えを「浅はか」と断じ、中途半端な人間がそのまま他店に行ったらもっと中途半端になるだけだと止めたのだ。「人生に無駄なことはない」と新しいことへの挑戦が推奨されることもあるが、それが生きるのは一定の方針が決まっている人だけだろう。
●「教えたことを、まずは3年続けなさい」
「石の上にも3年」という格言があるように、ベースとなるものがぐらついているときに、自信のなさをごまかそうとして動き回っても失敗しがち。腕の未熟さを食材のせいにしてもいい結果にはつながらない。師匠の言葉はこの後、以下のように続く。「材料も、足したり引いたり余計なことをしないほうがいい。変えるのはそれからでもできる。字でも、楷書をきっちりやると行書もできるんだよ」
ベースが身についていれば応用ができ、職人として強くなれる。つぎつぎにオリジナルメニューを開発し“自分の味”を世に問う店は一見するとがんばっているように見えるが、そうとはかぎらないと田内川さんは言う。ベースとなる味がおいしくて繁盛しているなら、わざわざ変える必要がないからだ。「安易に環境を変えたり最新のテクノロジーを導入したりするより、まずは実力をつけるのが先だと思います」
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