東京都で本マグロが年間40トンも水揚げされるようになっている。何が起きているのか。時事通信社水産部の川本大吾部長は「太平洋の本マグロ資源が回復し、離島でマグロが獲れるようになった。1キロ当たり2500~4000円の競り値で取り引きされ、有名産地に引けを取らない」という――。
豊洲市場で頭角を現してきた伊豆諸島産の本マグロ
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豊洲市場で頭角を現してきた伊豆諸島産の本マグロ

東京都の漁業生産量はピーク時の4分の1に減少

マグロといえば、青森県・大間をはじめ、北海道の戸井、宮城県の気仙沼、和歌山県の那智勝浦といった産地が有名だ。ここに割って入るべく、日本の首都・東京で獲れた「天然・生の本マグロ」をブランド化しようという動きが出ている。

東京都の特産品といったら、農産物では谷中ショウガや練馬ダイコンなどが「江戸東京野菜」として知られている。一方、魚はというと、これといって浮かばないのではないだろうか。

東京都に漁業のイメージがあまりないのは無理もない。「江戸前の魚」と称されるアナゴやスズキなどは、主に千葉県や神奈川県内で水揚げされている。

都の漁業といえば、かつては東京湾で盛んにノリ養殖が行われていた。そのほかにもテングサなどの海藻類を中心に、年間の漁業生産量は1988年までおおむね1万トンを超えていた。だが高度経済成長期の水質汚染により“海の砂漠化”と呼ばれる「磯焼け」が進行したり、埋め立てによって漁場が縮小したりしたことから、海藻類の生産は激減。2022年の漁業生産量は約2300トンと、ピーク時の4分の1以下に激減している。