スマホの普及に伴い、「年間に1冊も本を読まない」という人が増えている。そんな中、PRを担当した書籍が次々30万部50万部クラスのヒットになる伝説の人物がいる。QUESTO代表の黒田剛さんは「PRといえば商品説明のリリースを送ること、と考える人が多いが、僕はメール等で一斉にリリースを送るということは絶対にしない」という――。(第1回/全2回)
※本稿は、黒田剛『非効率思考』(講談社)の一部を再編集したものです。
メディアにリリースは送らない
じつは僕は、リリースを一斉にメディアに送る、ということをしていない。
一般に、新商品が発売されるとき、企業からリリースを各メディアに一斉に送る、という宣伝手法が使われる。
出版社も、新しい本が出るときはリリースを作って各メディアに送る。リリースには、本の内容、発売日、著者紹介、問い合わせ先などが書かれているのが通常だ。「リリースを送る」というのは、PRの王道とも言えるだろう。
効率よくPRしようとすると、リリースの一斉送信という方法になるのかもしれない。けれど、すべての人が同じことを行うと、その価値は下がる。送る側は届けられたと思っていても、結局、相手は見ていないことがほとんどなのだ。
リリースを送ることが悪いわけではけっしてない。ただリリースを送って終わり、では、何もしていないのと同じ、ということだ。
「営業のための営業」をしていないか
直接テレビ局を訪ねることも同様だ。
僕も、リリースを持ってテレビ局へ行き、「今度こういう本が出るんですけど、よろしくお願いします!」というような営業もやってみたことがあるが、1回でやめた。「ああ、そこに置いといて」で終わってしまうからだ。
僕が逆の立場だとしても、同じことを言うと思う。「これをやっていても、絶対決まらないな」と思ったのだ。
忙しいテレビ局の人に、「今度こんな本が出るので打ち合わせしてください」と、アポイントを取って会いに行って提案する、というのも非常に難しい。相手の興味を引かない限り、提案する時間を作ってもらえない。
メールを送っても見てもらえない。会いに行っても話を聞いてもらえない。アポイントも取れない。書籍PRとは、これまでやってきたような営業的な営業ができない職業なのだ。