銘ワイン「バローロ」の誕生秘話

こうした銘ワインも、名声を得るまでには多くの努力の積み重ねがあった。ネッビオーロ種のワインは、元来は微発砲の甘いワインだった。今のような辛口に生まれ変わったのは、まさにイタリアが社会変革を起こそうとしていた時代だった。国家統一後に初代首相となったカミッロ・カブールは、ピエモンテの小さな農村の村長だった。その頃、彼はフランスの醸造家を村に招聘し、新たな醸造技術を導入していた。この挑戦によって甘口のネッビオーロは、今につながる長期熟成の、フルボディの辛口に変わったのである。

その後、バローロの名声が確立されたのは、統一国家の宮廷で提供されるようになったためである。そこには、当然、首相カブールの介在があった。銘ワインのバローロの誕生には、時の覇権者サヴォイア家を中心とした国家統一の動き、海外(フランス)からの新技術の導入、農村の再生を願う村長(後の首相)の存在があったのである。

立ち上がった若き生産者「バローロ・ボーイズ」

しかし、「バローロの物語」はここで終わらない。人の嗜好は時代とともに変わる。1960年代後半、ワインが大衆化し、ボジョレー・ヌーヴォーのようなフルーティで早飲みのワインがブームになった。バローロの最低熟成期間は38カ月だが本当にバローロらしい味になるには10年は必要とも言われる中で、そうした長期熟成の高額ワインは時代遅れになった。そうした時流に抗し、何とかその状況を打破したいと立ちあがった若者たちがいた。「バローロ・ボーイズ」と呼ばれる生産者たちである。