マーケティングの究極の目標はクチコミをコントロールすることです。しかし、企業がクチコミをコントロールしようして逆にサイトが大炎上するといった失敗例には事欠きません。
マーケティングのプロといわれる人たちは、「クチコミはコントロールできない」と口を揃えます。それは真理には違いありませんが、クチコミの潮目を変えうるノウハウやコツのようなものはあると考えています。
不祥事を起こす、ユーザーとのトラブルを抱えるなどした企業がネガティブなクチコミを生み出して、それが広まってしまったとします。そのとき、ネガティブなクチコミの拡散を収束させるためのポイントは3つあります。
1つは、あるソーシャルメディアで発生したネガティブなクチコミは、同じソーシャルメディアでしか消せないということです。ツイッターで発火したらツイッターで、ユーチューブで発火したならユーチューブ上で消火作業をしないと収まらない。企業によっては、電話や書面でのクレームには丁寧に対応しても、ソーシャルメディアとなると放置しておくところも依然としてあるものです。即座に対応しないと企業の存亡にかかわるといっても過言ではありません。
2つ目は、ネガティブなクチコミが事実と反していれば、事実を隠すことなく迅速に、そして真摯に伝えることです。これができずに炎上するケースが少なくありません。企業のスタンスやトップの判断力が問われています。
3つ目のポイントは「共感」です。共感にもプラスとマイナスがあって、「だからダメなんだ」「どうしようもない会社だ」というマイナスの共感が伝播していくのがネガティブなクチコミの怖いところです。この共感をコントロールするには、相手と「会話」をしなければいけない。一方的にお詫び広告を出したところで、効果はほとんど望めません。消費者と向き合って言葉を交わす必要があります。
この3つのポイントを押さえなければネガティブなクチコミの拡散を防ぐことはできません。見方を変えれば、それはポジティブなクチコミをコントロールするコツでもあるのです。
1957年生まれ。早稲田大学理工学部卒。キャニオンレコード(現ポニーキャニオン)に入社し、「だんご3兄弟」等数々のヒットを手がける。デジタルガレージ副社長を経て現職。デジタルハリウッド大学院教授、コンテンツ学会理事等も兼務。
鳥取大学工学研究科 機械宇宙工学専攻 教授 石井 晃(写真右)
1957年生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科博士後期課程修了。理学博士。2008年より科学技術振興機構戦略的創造研究推進事業研究員。デジタルハリウッド大学ヒットコンテンツ研究室客員研究員。専門は計算物理学手法を用いた表面科学。