※本稿はサンドラ・ヘフェリン『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)の一部を再編集したものです。
71歳の高齢女性が10代の少女のような恋をした顛末
「私の71歳の女友達がね、このあいだ思いっきり恋をしたのよ!」
こう話してくれたのは、64歳で留学するなど、おひとり様を満喫中のベアーテさん。聞けば、その女友達は夫を亡くしたあと、長らくシングルだったとのこと。生活に特に不満もありませんでしたが、ある時、ときめく相手に出会ってしまったのだとか。
「久しぶりの恋愛は『大変』のひとことに尽きるわ……60代の私が70代の友人から10代の女の子のような恋愛相談を受けることになるとは思わなかったわ。だって、すごいのよ。『電話したほうがいいと思う?』と聞いてきたかと思ったら、『電話、やっぱりやめておいたほうがいいかしら……?』『やっぱり電話するのやめるわ』『やっぱり電話したの』というような連絡がひっきりなしに来るんだから」
目を白黒させているベアーテさんに「それで、その恋はどうなったんですか?」と聞くと、笑い出しました。
「結局、本人がそのうち『大変過ぎるわ』と言って自分からやめたのよ。ときめいたのはいいんだけれど、高齢というのもあって一日中『ああしたほうがいいかしら? こうしたほうがいいかしら?』『私のことをこう思っているかしら? それともああ思っているかしら?』と考えるのに疲れちゃったんだって。それで今は嘘のように、もとどおりの地に足のついたシングル生活に戻っているのよ。人間ってよくわからないわよね」
ドイツ人は配偶者に先立たれたら新聞で恋人を募集する
ドイツ人が配偶者やパートナーが亡くなったあとの恋愛に積極的なのは、ヨーロッパは断然「カップル社会」だからでしょう。ドイツでは昔も今も大手の新聞に「出会い系のページ(現在はサイトのことも)」があります。自己紹介とともに相手に求める条件などを書いて投稿するのですが、10代の頃、私はよく友達とこの「出会い系」に書かれた文言を見ては笑い転げていました。
自信たっぷりの自己紹介に、「ほんとうかな〜?」と思うことも多いのです。
「『身長187センチでスポーティな体型』と書いている人は、いい身体かもしれないけれど、髪の毛がないのかな? 『週末は家で君とゆっくりしたい』ということは、君に家事をやってもらいたいし、外でお金を使いたくないのかも?」
いろいろと友達と妄想しては笑っていました。まあ私たちの性格が悪かっただけかもしれませんが。それでもドイツ人と話すと、「出会い系」での自己アピールの「誇張」がよくネタになるのは確かです。