フジテレビとフジ・メディア・ホールディングスが設置した第三者委員会が調査報告書を公表した。中居正広氏とフジの問題とは何だったのか。元MBS毎日放送のプロデューサーで、同志社女子大学メディア創造学科の影山貴彦教授は「報告書は中居氏の性加害を認定、フジ経営陣の責任を明確にした。画期的だった点はこれだけではない」という――。

“玉虫色”の結論はなく、衝撃的だった

3月31日、フジテレビの第三者委員会が公表した調査報告書は驚くべきものだった。これまで日本社会で往々にしてよしとされてきた玉虫色、騒ぎをできるだけ大きくしないという穏便な結論にとどまるのではなく、経営陣の責任や企業風土などを厳しく追求した衝撃的な内容だった。フジテレビにとってはこの上なく厳しいものであるが、この調査報告書は日本社会に対して風穴を開けたと評価したい。

私は会見前、中居正広氏と元女性アナウンサーとの問題の真相が、どれほど具体的に書かれているかという点に注目していた。調査報告書が抽象的で中途半端なものであれば、すべてが台無しになる恐れがあった。しかし蓋を開けてみれば、その心配は杞憂きゆうに終わる。全394ページの調査報告書には、中居氏と女性、フジテレビ社員とのやり取りが具体的に、かつ生々しく記載されていたからだ。

事実関係を正確に把握するため、第三者委員会は関係者に対して徹底的な調査をおこなった。ヒアリングを受けたあるフジテレビ社員は、その時の様子を「取り調べ」に例えたという。「しんどい」と感想を漏らしてしまうほどの厳しい追求があったことは、調査報告書全体からも感じ取れる。いろいろな制約があるなかで、わずか2カ月であれほどの調査報告をまとめた点はもっと高く評価されて良いだろう。第三者委員会の竹内朗委員長をはじめ、弁護士のみなさんには改めて敬意を表したい。

第三者委員会竹内委員長
撮影=石塚雅人
第三者委員会竹内委員長

組織の責任がはっきりした

それ以外にも、着目したポイントが2つある。

まず、第三者委員会が、大筋として「週刊文春の報道は正しかった」としていることだ。週刊文春は第一報で問題が発生した日、女性を会食に誘ったのはフジテレビ社員だと報じた。第二報で、フジテレビ社員の関与はなかったと記事を訂正。それを発端として週刊文春に非難のベクトルが向かったが、第三者委員会は中居氏と女性の問題を「業務の延長線上における性暴力」と認定した。問題をめぐってはフジテレビ社員あるいは組織が関与していたかどうかが焦点となっており、第三者委員会はそれも汲み取ったうえで、総合的には事実に変わりないと指摘した点は大きい。

次に、組織としての責任についてはっきりと言及していたことだ。女性が被害を相談した際、フジテレビの編成を担うキーマン3人は「プライベートな男女間のトラブル」と判断し、密室ともいえる空間で意思決定をおこなった。そのキーマン3人は、当時の港浩一社長と大多亮専務、編成制作局長である。