港社長(当時)が行った「紙芝居会見」の真相
記者会見を2025年1月17日に開くまでも、紆余曲折があったと報告書は記している。その右往左往ぶりも、同社の体たらくを如実に示す。
しかし、かつてフジテレビ系列の関西テレビの報道部門で働いていた私にとって、報告書を読んで、もっとも滑稽に感じたのは、この会見の「真相」をめぐる見解の相違である。
フジテレビ報道局の平松秀敏編集長は、あの紙芝居会見について、フジテレビ系列各局との会議の席で、次のように発言している。
平松氏が期待していた第三者委員会の報告書によれば、その「真相」は、「人権侵害の恐れ」であり「被害者に対する人権侵害を回避することを優先する」ためであった(85ページ)。港氏が、1月27日の2度目の記者会見でも何度も強調した点である。
報道局長の「進言」?
また、平松氏と同じ席で、報道局長の渡辺奈都子氏は、「事前にクローズの形だということを聞きつけまして、私だけじゃなく、言うべき声を上げたり、進言した者はもちろん多くいるんですけども、それでも覆らなかった」と反省している。
報告書では、渡辺局長が、石原正人常務(当時)に対して、「せっかく苦労なさって会見するのに非難轟轟になってしまったら残念だと思うのです」と当日の午前9時41分にショートメールを打ったと書かれている(86ページ)。
これのどこが「言うべき声を上げたり、進言した」姿なのだろうか。上司に敬語を使い、懸念を示しているに過ぎないのではないか。
さらに、同社の夕方のニュース番組「Live News イット!」における記者会見の「謝罪」表示について、港氏が怒った。そう、報道担当取締役を通じて伝えられると、報道局全体で、ニュースの表記を「説明」に修正している(89ページ)。
平松氏も渡辺氏も、一見すると上層部に厳しい姿勢を見せているものの、報告書を読む限り、その本音が、どこにあるのか、わからなくなる。