国家主権を超える世界的権力は存在しない

多数の主権国家が並存する国際社会においては、国家主権を超える世界的権力は存在しない。国際連合は、主権国家間の合意を形成する多国間外交のプラットフォームとして重要であるが、主権を前提とする国際システムの限界を乗り越えることはできない。国連憲章は安全保障理事会(安保理)の決議が加盟国を拘束すると明記しているが、拒否権を持つ安保理常任理事国の国益に反する決議が採択されることはまずない。ロシアによるウクライナ侵攻はこうした国連の限界を改めて印象づけた。

また、ヨーロッパ統合の歴史は地域共同体による超国家的権力の萌芽を感じさせたが、それが将来すべての国家から主権を委譲された「世界国家」につながると期待することは余りにナイーブである。

国際社会の基調は、大小200程のリヴァイアサンがしのぎを削る権力政治(power politics)である。そこに、強制力のある世界的法執行機関が生まれなかった理由がある。その意味で、国際社会は「法の支配」が脆弱な社会なのである。大国が法の支配に基づく国際秩序にコミットし、それに反する力の行使を自制することが平和の条件となる。