「もう少し“押して”くれてもよかったのに……」
住宅営業には相見積もりが付きものだ。コンペで破れたときに敗因を調べると、こんな意見が寄せられるという。
「和室が欲しいといわれたら、『ハイ、和室をつけましょう』と応じるだけ。それではダメで、『どんなふうにお使いになるんですか?』と聞いていかなければ、お客様の真の要望を掘り起こせません。答えがもし『コタツに入りたい』だったら『洋間でもコタツは使えますよ』と提案することもできるわけです。お客さんはなぜ、こんなことをいうのか。なぜ展示場に来られたのか。営業マンは本来、自分なりの仮説をもとに次々と質問を発し、相手の状況や要望を理解していくものです。その意味で、いまの若手は総じて踏み込みが浅いと思いますね」
こう話すベテラン五十嵐さんに、もう一歩「踏み込む」ためのコツを教えてもらった。
「ノーといわれるのを怖がらないことです。『ミサワでは家をつくりたくない』といわれたら『なぜですか?』と切り返し、問題点を一つ一つ解決していけばいいのですから」
菅野君が「なるほど」という顔でメモをとっている。いまのところ大事な商談には先輩に同行してもらっているという菅野君だが、この分だと一人立ちの日は近いかもしれない。
(芳地博之=撮影)