「寝てる間は、何も考えなくてすむんです。起きるとがっかり。どうしよう、どこに行ったことにしよう、と……」
後藤善郎さん(仮名、27歳)の言葉と表情には、生真面目さと自虐が交互に現れる。
準大手電機メーカーに入社して4年。北関東の営業所に朝8時出勤。自社のロゴ入りのライトバンで、近隣地区の中小企業や商店街を1日十数件回る。夜、オフィスを出る頃には、時計は10時を回る。実家には寝に帰るだけだ。
「昨年10月から、ほんとに不況感が出てきました。週休3日、4日とか、稼働が半日だけだったり、足繁く通っていた工場が急に『従業員の給料を下げなきゃ』と言いだしたり……」
年初も動き出しは遅く、成人式までまったく動く気配のなかった訪問先もあった。
「もともと苦戦している地域。これまで私が属した営業所は、どこも業績が芳しくなかった。でも、ノルマは他地域の営業所と変わらない」
という後藤さん、ご自身の手腕をどう評価しているのか。
「昨年は、社内的には“中の上”でしたが、今年に限れば“下”」“上”の営業マンもいるわけだ。
「言い訳は嫌ですけど、“上”の人は担当しているエリアがいいですね。“中”の人は、努力している人。他人よりたくさん件数を回ったり……今も昨年から数字を落としてない人もいます」
現在、年収は300万円程度。
「ボーナスは、今は同期とではそんなに差はありません」
新人時代、数カ月の研修の後、地元を回った。“忙しい”“他社と取引がある”と断わられ続けた。訪問先の社長に「社長はいません」と言われたことも。
結果がなかなか出ない。そのうち、ネットカフェに出入りするようになった。
「リクライニングシートで寝ることが多かった。枕代わりのクッションやひざ掛けもある」
ブースで1日1時間か2時間。午前中すべてを費やすことも。
「カレーとかが200円で食べられるんです。1000円払ってここに入っても、外での昼飯代を考えれば安いでしょう」